第7波の現状に関する意見(2022/7/17)

東京都のCOVID-19感染症流行の第6, 7 波について詳しい数理解析していませんが,これまでの理論的立場から概要について述べます.東京都における第5波,第6波の拡大開始日,最大陽性者数の日,および収束日における陽性者数と検査人数,陽性率(過去7日平均)を比較的に図1に示します.また第7波の拡大開始日と7/16日現在のそれらの値も示しました.これから以下のことが分かります.

 

  • デルタ株の第5波に比べて,オミクロン株の第6波は,拡大期の陽性者増加速度に比して検査人数の増加速度が小さく,陽性者最大値の日の陽性率は第5波の2倍になっている.
  • 第6波の減少期においても検査人数が比較的少なく,検査・隔離率γが感染率βより十分大きく維持されなかったため陽性者の減少速度が緩慢であった.そして日毎陽性者2000人程度,陽性率10%程度のまま第7波を迎えてしまった.この原因として,オミクロン株は重症化率が小さいので人々はあまり真剣に検査・隔離を考えなかったということがあると思われる(withコロナの方向転換は科学的に正しいと思う).
  • 6月15日ごろから始まった第7波は感染率が高いBA.5株が主原因といわれるが,開始点の陽性率は第5波と同じ10%で,感染率(β)―検査・隔離率(γ)=0となっていた.その後7/1, 7/7日に週ごとの増加率が1.5倍,2倍になり,7/12日に2.45倍の最大値をとり7/16日現在で2.22倍となっている.市中感染者がこれと同じ比率で増えていると仮定すれば(厳密には違うが),週毎の増加率が2倍のとき日毎の増加指数はβ-γ= 0.1 となる.即ち感染率が0.1だけ検査・隔離率を越えているので,検査人数もγの現在値を0.1 以上に上げれば,β―γ< 0 となる.要するに感染率の増加分だけ検査人数を高めて検査・隔離率を増加する必要がある.ただし現状のγ値が分からなければどれだけ上げるべきかは不明であるが,過去の分析データからγ=0.3程度とみなせば,30%増加させなければならない.図1を見ると,第7波は検査人数の増加率が徹底的に遅れており,これが日毎陽性者の急激な増加を招いている要因である.すでにβ―γは最大値を経て減少しつつあり,β―γ=0となる日に市中感染者が最大値となる.日毎陽性者の最大値は2,3日遅れるがその後は減少期に入る.感染率の増加要因にはワクチン接種による抗体の減少もあると予想され,特に若い世代のブースター接種が重要である.幸い重症者の割合はあまり増えていないが,発症者の病状はかなり厳しいという報告が出ている.今後withコロナの方針でよいか否かは検査・隔離体制の強化状況に依存するだろう.

「検査・隔離体制を強化することにより社会経済活動を縮小させることなくコロナ戦争に勝つことができる」.この考え方は僕の最初からの理論的立場です.現在はほぼ主流になりつつあると思いますが,そのためには検査・隔離体制の強化(土・日の臨時検査補強体制)が必要・不可欠であることが感染症の行政専門家にもまだ十分認識されていないように思えます.

東京都のCOVID-19の第5,6,7波の簡単な比較